ごはんのふるさと秋田から [JA全農あきた]
秋田米.com ごはんのふるさと秋田から




 羽後町仙道地区は、標高250mの中山間地。全体の8割を占めるという山の裾野を縫うようにゆるやかな棚田が広がっています。厳しい自然環境ですが、鳥海山系を源流とする高瀬川の清冽な水と昼夜の寒暖差の大きな気候でおいしい秋田米が栽培されています。代々農家に育った松本さんが、もっとおいしい米、価値のある米づくりを追求してたどり着いたのは、地場産の畜産堆肥を利用した有機質肥料でつくる特別栽培米。その実現には山間地ならではの苦心もありました。


バリトン伊藤(以下:バ)家の向いが棚田、その向こうがきれいな山並み。いいとこだすな。

松本(以下:松)熊やカモシカにもよく出会うすよ(笑)。すぐそこの田んぼの水路では、ホタルもいるし。

バ:田んぼの農薬でホタルが減ったっていう話はよく聞くすども、田んぼの水路でホタルって、なんぼきれいな水だすべ。

松:ここは、鳥海山系に続く山並みを縫って、集落や田んぼが開けた地域です。その多くは棚田で、昔は機械も入れにくい小さな田んぼばかりでした。平地並みとは行かないけれど、今はある程度広げることができたので作業も楽になりました。農業用水は、鳥海山系から流れる高瀬川の水と、この集落の奥に古くからあるため池で水量を調節しているんです。だから米づくりにもいい水が使える。そして集落全体で農薬や化学肥料を減らした栽培方法に取り組んでいるので、流域の環境もよくなってきましたね。


バ:松本さんが取り組んでいる米づくりってどんなものだすか?

松:地元のJAこまちで作った有機堆肥を利用して、農薬をできる限り減らしていくという試みです。私がこの集落の生産グループ「たかせ有機こまち会」に参加したのは5年前からで、現在地元の農家98人で有機質肥料でつくる特別栽培米に取り組んでいます。それまでの一般的な栽培方法から2割、4割と年々使用量を減らし、今年から従来の半分にまで減らすことができました。JA管内の畜産堆肥などを利用した有機質肥料は、栄養があり過ぎるのか、最近ではちょっとセーブしているほどです。

バ:土が肥えてきたんだすな。いい水に土、それに昼夜の寒暖差で旨味や甘みがぎゅっと詰まったおいしい米ができるんだすべ。
松:冬場は2m以上の雪が積もる豪雪地帯です。雪解けも遅いし、寒くなるのも早いから、田植えや稲刈りは毎年大急ぎだ(笑)。でも、稲に穂が出て籾の中で米が成長する夏場には、日中気温が上がっても、夜はかなり下がるという気候のおかげで、うまい米ができるんです。平地の田んぼに比べて1〜2割収穫量は落ちるけど、品質はいいですよ。

バ:たくさん作るよりうまい米をつくるっていうことだすな。

松:山間地ですから、それほど作付け面積を広げられないという現状もあります。平地の専業農家なら6〜7haの作付けも一般的でしょうが、うちだって2.3ha。昔に比べて田んぼは広くなったといっても、平地に比べればまだまだ小さいし、段差が多くて機械を動かすにも手間暇がかかります。さらに、農薬を減らした分、草取りなどの手作業も必要なので手が回らなくなるんです。だから、なおさら高く売れるいい米をつくる必要があったんです。

バ:評判が高いって聞いてるすよ。ほかの農家や首都圏の消費者が見学に来るんだすべ。

松:田植えや稲刈りの農業体験に来る消費者の人たちや、特別栽培米に興味を持っているほかの生産者も、たまに見に来ることもあります。自分たちの米づくりのことを消費者に知ってもらうのはもちろんだけど、ほかの生産者にも全部オープンで教えることにしてるんだすよ。そうすれば技術の普及も効率的だし、次の世代にもつなげるからね。

バ:生産者が増えればいい米がたくさん出荷できるし、将来にもつなげるってことだすな。

松:ただし聞いたからって簡単に覚えられるものでもないし、すぐ成果が出せるものでもないからね。何でも簡単にできて一気に儲かる方法なんてないもんですよ。それに、年長者がいつまでも一線で働いているって言うのも考えものだすな。次の世代につなぎたいと思ったら早く仕事を教えてじっくり育ていったほうがいいから。


バ:松本さんはまだ引退できないっすべ?

松:使用農薬を2割まで減らしながら病気に強い米をつくってみたいすな。

バ:もうちょっと働かねばねっすな。



取材日 平成23年8月31日

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